おどりば

ロースペックうつ病患者のブログ。寛解をめざして!

精神科医に失望しました--『うつ病休職』を読んで、患者が思ったこと

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こんにちわ、サユです。
今日は書評です。とはいっても、本をオススメするワケではありません。
珍しく、うつ病に関する本を読んでみたところ、非常に多くの学びがあったので、この燃え上がった気持ちが落ち着いてしまう前に、ここに記します。

っていうか書かないとこのモヤモヤの収まりがつかないので書きます

この本を手に取るきっかけとなったのは、Twitterで流れて来たこちらの記事でした。

www.newsweekjapan.jp

聞いてみると、「職場でストレスがある」と言います。医師から見ると、それは仕事をする以上はあたりまえのもので、それほどのストレスとも感じられない場合が多い。 

引用されたこの一文を読んで、短気な私の頭はのぼせあがりました。

私は常々、本人の苦しみは本人にしか判らず、他人に向かって「お前の苦しみは大したことがない」などという資格は無い、という持論を主張しています。
外からの見た目だけで他人が判断できる真実なんてほとんど無い。私はそう思っています。

しかし、私みたいな学の無いバカにでも解るようなことが、この著者はお解りではないらしい。
「それほどのストレスとも感じられない」って、それはあなたの勝手な主観でしょう!

これが、私たち患者が助けを求める相手なのか!
こんな相手に助けを求めるしかないのか!

私は精神科医という職を選んだ人達をそれなりに信用していました。最低限、患者の苦しみに寄り添おうとする意思と態度は持っているハズだろうと思っていました。
……ひどい精神科医の話もいろいろと耳にしたことはあったけれど、そんなのは希少種だと思いたかったんです。

でも、こうして堂々と本を書いているこの精神科医からは、ひどく冷たいものを感じる。
著作は複数あるらしい。なんか棘のあるタイトルばかりだけど。
つまり、この医師の考えはそれなりに受け入れられているということなのか。

いやいや。
もしかしたら、メディアでしばしば発生する下手くそな引用によって本文の印象が変わってしまったのかもしれない。センセーショナルな部分だけ切り出した結果なのかもしれない。
だから、読んでみよう。その上で判断しよう。

祈るような思いで、私は『うつ病休職』を手に取りました。

 

うつ病抑鬱反応。

まずは、本書の中で繰り返し語られる「うつ病抑うつ反応は別物である」という著者の考えについて触れたいと思います。

近年の新しい診断基準(主にDSM-5)では、かつては別物であった「うつ病」と「抑うつ反応」が混同されてワケの判らないことになっている、これはおかしい、というのが全体を通じての著者の主張です。

「環境的ストレスによって発症するのは抑うつ反応であって、うつ病ではない」「うつ病は、原因が了解不可能であることが必要である」……要するに、明らかに周囲からのストレスが原因でうつ状態になった場合は、それは「うつ病」ではなく「抑うつ反応」と診断されるべきだ、ということらしいです。

DSM-5やICD-10といった、最新の国際的基準によるうつ病の診断を、著者は「誤りである」と断じます。
私は過去の診断基準と現在の診断基準の差異を把握していませんし、過去のうつ病概念に執拗にこだわる著者の態度を「老害」と斬って捨てることも無知ゆえに可能なのですが、……薬物による治療が必要な「うつ病」と、環境改善によって病状の改善が見込まれる「抑うつ反応」という区別が実際に可能なのであれば、治療の上で大いに役立つように私には思えました。

私はこのブログを介して「精神科医に落胆した」患者の体験談と数多く接しています。
その中で比較的多いのが、苦しみに耐えかねて診察を受けたのに「あなたは本当のうつ病じゃないよ」「あなたは病気じゃないよ」と言われてしまったという例です。

「こんなに苦しいのに病気じゃないの?じゃあ私のこの苦しみは何なの?甘えだとでもいうの?本当のうつ病じゃないってどういうこと?」と、患者が思うのは当然のことです。たとえ深刻さが医師に伝わらなかったとしても、苦しみは確かに存在するのですから。

……恐らく、不用意な言葉で患者を傷付けた医師たちは「それはうつ病ではなく、抑うつ反応だ」と言いたかったのではないでしょうか。
過去の診断基準を尊重すれば、「抑うつ反応」は「偽物のうつ病」とも言えるでしょうからね。

この件に関して、著者に個人的な感想を言うならば、「診断基準がおかしいと思うなら一般向けの本なんか書いて愚痴ってないで、もっと医学界に働きかけるとか、医者としてのやり方は何か無いんですか?」といった感じです。

私たち一般患者はDSM-5をうつ病の診断基準として受け入れています。
DSM-5やICD-10が国際基準になっている限りは、本で見かけた一医師の意見よりも国際基準の方を信用せざるを得ません。代替医療よりも標準医療を信用するのと同じことです。

専門家ではないので詳しいことは存じ上げませんが、DSM-5が「うつ病」の範囲を広げたことにも、それなりの理由があるのだろうと私は考えています。
「本物のうつ病じゃない」なんてケロッと言ってしまえる精神科医よりも、精神科医の主観を排してできるだけ広い範囲の人たちの苦痛を病として包括してくれるDSM-5の方が、よっぽど優しいし、「患者のために考えられたものである」という印象さえ持っています。

ただ、もしも「うつ病」と「抑うつ反応」を区別し、対処法を変えることによって患者の回復が早まる可能性が本当にあるのならば、医学界の方々には真剣に考えていただきたいと、一患者として願います。

 

うつ病を利用した問題の矮小化。

ここまで文句ばかり言ってきましたが、著者の考えには一部同意できるものもありました。
過労死とうつ病に関する問題に関する記述です。

「調子が悪い」と上司に相談すると、上司は「とりあえず心療内科に行って診断書をもらってきなさい。診断書があれば病休できるから」と勧めます。

(中略)

この場合、上司(会社)は、安全配慮義務を「とりあえず」果たしたことになります。
のみならず、本来は長時間労働という労務にもとづく問題なのに、「本人の病気」ということに問題を矮小化でき、かつ、労務管理の問題を棚上げできるという利益を得ます。

 なるほどな、と思いました。
「病気」という個人の問題にすり替えることによって、企業は、根本的な問題である職場環境の改善を先送りすることができるんですね。

職場環境の改善は簡単にはできません。
私は社会人ではないので、噂を聞くくらいの知識しかありませんが、理不尽な現状を是正するのが不可能に近い場合も多いようです。
そういう時、耐えられなくなって悲鳴をあげた人を「とりあえず」病気で休ませることによって、問題の解決を回避する……そうして「うつ病休職者」は増え続ける。
これじゃあ、患者が減るわけがないですな。

本当に解決すべき職場環境の問題から目を逸らすための診断書を書くことを、著者はひどく厭がっています。その気持ちは、私にも解るような気がします。

ただ、どんなに問題があるとわかっていても、医師に職場環境をどうこうすることはできないのだから、緊急避難の最後の方法として診断書を求めてきた患者に診断書を書くくらいのことはしても良いのではないかと、私なんかは思ってしまうのですが、……著者にもプライドがあるらしいので。

抑うつ反応は病気ではない」という診断を積み重ね、診断書を書くことを拒否することによって、誰かが救えるのか。それで労働環境が変えられるのか。助けを求めてきた人達を追い返すだけの行為ではないのか。
その辺りが、私にはよく解りませんでした。

 

精神科医に失望しました。

もしかしたら、メディアでしばしば発生する下手くそな引用によって本文の印象が変わってしまったのかもしれない。センセーショナルな部分だけ切り出した結果なのかもしれない。
そう思って最後まで読みました。
……希望は希望のまま打ち砕かれましたけれども。

礼儀として最後まで読みましたが、カチンときたポイントを列挙したら大変な数になりますので、特に苦痛だった点を一つだけ挙げておきます。

自殺は、本人の意思による任意的なものです。そして、心神喪失が認められるような例外状態においてのみ、その任意性が否定されるものです。「心神喪失の状態にあったとは言えないまでも、正常の認識・行為選択能力が著しく阻害された状態」といったものは考えられるとは思いますが、そうした状態においては、心神喪失ではない以上、ある程度は本人の意思の関与があるはずです。

これは、電通社員が過労の末に自殺を選択した事件に対する記述です。
周囲からのストレスによって「うつ病」になることはないため、電通社員は「抑うつ反応」状態であったと考えられるが、「抑うつ反応」で「心神喪失」になることはあり得ないので、電通社員の自殺は本人にも責任がある、というのが著者の考えです。

著者にとっては自殺も他殺も同じく「人殺し」なので、心神喪失が認められない場合は本人の責任が問える、のだそうです。
過労自殺した人に「自殺した人も悪い」という人が、まさか精神科医の中に存在するとは思わなかったので、ショックでした。

著者は、医師としてプライドを持って正しい判断を追い求めているのでしょう。
それも一つの「正義」だとは思います。
しかし、その正義からは何の温かみも感じられなかった。患者への情というものが感じられなかった。
それが私にはひどく衝撃的だったのです。
これが「精神科医」というものなのか、と。

精神科医は、意外とクールだ、という話を時々耳にします。
患者はがっかりするけれど、ある程度冷ややかな目で診なければ、適切な判断は下せないのだと。
……きっと、私は精神科医に期待し過ぎていたのでしょう。
今、私を診てくれている医師は、親身になってくれてとても良い方なので、そういう精神科医が普通だとどこかで思っていたのかもしれません。

だとしたら、この本は、私の目を覚ましてくれたことになりますね。

 

私はこれからも、精神科医への落胆の声を耳にするでしょう。
その時は、こう伝えたいと思います。

うつ病になったことのない精神科医なんて、うつ病に理解のない健常者と大して変わらない存在です。苦しみを理解してくれるなんて思わないほうがいい。同情とか共感は、多分、医者の仕事の範疇じゃないんですよ」

一応本は紹介しておきますが、当事者には読まないことをおススメしたいです。
読んでて本当にしんどかった…。